発表者 川口悠介 助教
発表雑誌 「Journal of Geophysical Research – Oceans」
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東京大学、北海道大学、海洋研究開発機構の合同研究チームは、シベリアとアラスカの間に位置する“アナディル海峡”で海洋調査を行い、北極海に流れこむ冷たい『湧き水』の存在を明らかにした。この観測は、ロシア極東海洋気象学研究所の「マルタノフスキー号」と海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」を用いて2017年と2018年の夏に行われた。それ以前の観測では、ロシア排他的経済水域(EEZ内の観測が制限されているためにアメリカEEZ内であるアラスカ沿岸の調査結果が中心に報告されてきた。これによると、夏に北極海に流入する海水は極めて高温で、その温暖な海水が北極海の海氷分布を主体的に決定すると言われてきた。しかしながら、アナディル海峡の西側(ベーリング海北西部シベリア沿岸)海域を「マルタノフスキー号」で詳しく調査し「みらい」の広域調査(アラスカ沿岸)とあわせることで、冷たい水が下層から湧き出すポイントが存在し、その水が海峡を北上することで北極海の低水温と海氷の維持につながっていることが明らかになった。この発見によって今後、以前より高い精度での北極海の海氷予測の実現が期待される。また今後はアナディル海峡の冷水の起源を特定し、詳しい調査を行うことで北極海の海氷とベーリング海北西海域の気候変動との因果関係を明らかにしていく。